2019年10月30日

【レポート】10月11日 ジャズアカデミー「15歳のジャズプレイヤーが感じた“ジャズの未来”とは」

 10月11日、ジャズ・アカデミー第2回【ジャズ・オーケストラの未来】がミューザ川崎で行われた。世界をまたに駆ける気鋭のジャズ作曲家をひと目見ようと市民交流室はほぼ満席になった。

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 言葉では表し難い、何ともジャンルの説明のつかない現代のラージ・アンサンブルを、私は解明してみたいと思った。現在進行形の“ラージ・アンサンブル”、そして海の向こうで起きているイノヴェーションを正確に説明できる大人だってまだ少ないのだから。

 美帆さんは光沢のある深い牡丹色のトップスに黒のタイトスカート、髪をアップにし颯爽と登場。すると私の頭の中でfox capture plan(現代版ジャズロック、若者に人気の日本人バンド) の「エイジアン・ダンサー」 “挾間美帆版”が鳴りはじめる。ピアノトリオの彼らは、第一・第二バイオリン、ビオラ、チェロを加えこの曲をアレンジした。美帆さんのバンドm_unitも、フレンチホルンを含む管楽器セクションに弦楽器を組み入れた珍しい13人編成なのだ。美帆さんのビジュアルからインスピレーションを得て、聴きなれたこの曲とm_unitの紡ぎだすサウンドが独りでに融合し、頭の中で鳴りはじめた。女子高生としての第一印象は“kawaii”だ。迎え来る台風対策にねぎらいの言葉をかけ、参加者の何となく不安な気持ちに寄り添うあたりや、何でも答えてくれそうな気さくさに、“かわさきジャズ公認レポーター”としても好感が持てる。

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 話はまず生い立ちから始まる。大河ドラマのテーマを作曲してみたいという初期衝動から、小学校の頃より漠然と作曲家を志す。国立音楽大学のサークル(ニュー・タイド・ジャズ・オーケストラ:コンテンポラリーが得意)の演奏を聴いて、自分の作りたい音楽に似ている!と入学早々ジャズの世界に飛び込んだり、好きな作曲家を追いかけマンハッタン音楽院に留学したり。当時、アメリカでの演奏機会は少なく、ラージ・アンサンブルのほとんどはヨーロッパで演奏されていたというのに。彼女が幾多の困難や壁を、むしろ励みとすらしているようなしなやかさは、新譜「ダンサー・イン・ノーホエア」のイメージそのもののようだ。

 様々な国籍やバックグラウンドを持つm_unitのメンバーをまとめ上げ、作曲家・アレンジャー・指揮・プロデューサーとしてNYをベースに世界を駆け回る。その原動力はどこからくるのだろう。クラシックとジャズの両立を目指す私としては、ジャンルの壁を意識せず、自由に行き来している美帆さんがとても頼もしく思えた。

 ここからビッグバンドの潮流、そしてラージ・アンサンブルとはいったいなんぞや?ということをご説明しよう。ラージ・アンサンブルとは、大編成で演奏するビッグバンドやジャズ・オーケストラの総称だ。ダンス・ミュージックとして求められた時代を経てカウント・ベイシーやデューク・エリントンにより鑑賞音楽へと昇華した。やがて現代版ラージ・アンサンブルの源流となるヴァンガード・ジャズ・オーケストラが誕生する。

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 50年あまりの変遷で重要な人物といえば、故ボブ・ブルックマイヤー。彼を師事したのが、近年【ギル・エヴァンス・プロジェクト】を率い未発表作品をリリースしつづけるライアン・トゥルースデル、個性的な作風のダーシー・ジェイムス・アーギュー。ヴァンガード・ジャズ・オーケストラにまつわるもうひとりの重要人物が、ジム・マクニーリー。美帆さんはそのジムに師事するため単身NYに飛び込んだ。一方、ギル・エヴァンスの弟子で女性ながら90年代以降のラージ・アンサンブル界を牽引してきた立役者がいる、美帆さんも影響を受けたマリア・シュナイダーだ。こうやって世界中から作曲家たちがNYに移住し、ビッグバンドの要素と楽器編成を駆使した新しい音づくりに挑戦し続け、創意あふれる優れた曲を次々と生み出したおかげで、現在のラージ・アンサンブル界は活性化した。

 美帆さんの解説を聞くにつれ、音楽を追求する姿やジャズ特有の演奏形態から、作曲家とは漫画の原作者で、インプロヴィゼーションを任されるメンバーはアニメーターや声優のように思えた。それぞれの世界観を自由に表現することで原作を超越するアニメ作品に仕上がるように、作曲家はメンバーに作品を託すことでバージョンアップを期待する。だからこそ、挾間作品の大事な要素となるメンバーは、音色やテクニックだけでなく、場の空気が読めること、人柄や生活態度にまでこだわって選ぶ。

 NYは多様な人種・民族のアイデンティティを受け入れようとする寛大な街。だからこそラージ・アンサンブルは成熟できた。そしてNYで自分にしか作れない音楽を追求する喜びが、美帆さんのエネルギー源なのだと確信する。一方、川崎はどういう街だろう。染み込んだ多様な文化や人々の記憶に“橋を架ける”のが、かわさきジャズのコンセプト。NYの包容力に助けられ進化を続けるラージ・アンサンブル同様、世代をつなぎ、ジャンルを超え、地域に橋を架ける都市型音楽フェスは、川崎に何をもたらすのか。

 多くの社会人バンドが活動するこの街で、大河ドラマのラージ・アンサンブルを聴き、いち早く最新のNYジャズがかかることを待ち望みたい。

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Text:坂井奈々香(かわさきジャズ公認レポーター)

◎イベント概要
【かわさきジャズ2019 ジャズアカデミー】
日時:10月11日(金)13:30〜15:30
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール 市民交流室
テーマ:ジャズ・オーケストラの未来
講師:挾間美帆 (ピアニスト、作・編曲家)
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2019年10月29日

【レポート】川崎ジャズプレイヤーズフェスタ

ジャズを愛してやまない社会人プレイヤーたちが大集結する、毎年恒例のフリーライブイベント【川崎ジャズプレイヤーズフェスタ】が10月19日、20日の2日間、川崎駅前2会場(ミューザ川崎シンフォニーホール市民交流室/ラゾーナ川崎プラザソル)にわたって開催されました。

多数のバンドが出演した同フェスティバルより、20日の市民交流室に出演したponte mareのライブの模様をお届けします!
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♪Ponte Mare♪
バンド名は海の橋…横浜を中心に活躍中!!
ジャズは港町横浜から川崎〜ココに橋が架かった!
圧倒的な存在感Vocalさいとーえりさんにこにこ
唄ってる時のノリの良さ、美しい佇まいが半端ない。

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観客席の上品な叔母さまが思わず足でリズムを取っているのが可愛らしく微笑ましい。
今どき男子も大きく写メとり、満足顔。
Vocalえりさんの指のカウントと客席の手拍子!
会場全体がひとつのスウィングになった瞬間。ブラボー٩( ᐛ )و

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photo & text by 金井まち子(かわさきジャズ公認レポーター)
posted by kawasakijazz at 16:25| Comment(0) | レポート

2019年10月16日

【レポート】10月4日 ジャズアカデミー「J−ジャズの“ガラパゴス化”を回避する秘策とは」

 10月4日、ミューザ川崎シンフォニーホール市民交流室にて今年も【ジャズアカデミー】が開催された。第1回講座のタイトルは「ジャズのガラパゴス化、あるいは戦後歌謡史」。講師は毎日新聞学芸部の名物音楽記者で11月の【佐山雅弘メモリアル・コンサート「ピアノ6連弾」】にも携わっておられる川崎浩氏。
 スクリーンを備え広々とした市民交流室が約100名の参加者でほぼ埋め尽されたこの日。男性は大半が60代以上、女性は筆者と同じ50代が中心。青春時代はアイドル全盛であり、そして90年代に起こった日本の一大ジャズブームメントの頃に20〜30代だった彼らは、昨今のジャズ絶滅危惧種論や“ガラパゴス”という一瞬はっとするタイトルにどんな思いを抱いたのだろう。

プロ達が分かりやすくジャズをレクチャーする全4回のジャズ講座【ジャズアカデミー】、今年も満員御礼写真は2019年の記念すべき初回に講師を務めてくださった、毎日新聞学芸部の川崎浩さん。アンクルトリスのシャツが素敵です時代背景を絡めながらJジャズ史をたっぷりと語ってくださいました️明日はいよいよ最終回、トロンボーン奏者の池田雅明さんとテナーサックス奏者の三木俊雄さんがご登壇です

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 川崎氏は懐かしいアンクルトリスをあしらったアロハシャツ姿。マイクを勧められるも「声が大きいから要らないよ。」と、休憩もそこそこに2時間余りを熱弁。SP盤を転写したCDを流し歌謡史解説を交え大正期から順に聴き比べていく。「日本初のジャズには爆笑しますよ。」と、33年録音の民謡が流れ出すと、おけさもカッポレもジャズ!? という驚きと斬新さに沸いた。大正デモクラシー頃の奏者や歌い手はまさに自由闊達でのびのびとした印象だ。昭和に入るとフランク永井の歌声でノスタルジーに浸る。参加者はひたすら曲と解説に聴き入った。

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 曲の合間に時代背景と音楽との密接な繋がりが語られる。戦前から存在する軍楽隊、特に海軍はラジオ短波の影響を受け様々な国の音楽を吸収していった。原信夫や宮間利之たち多くのジャズマンが軍楽隊で鍛えられ結果的にジャズの発展に大きく寄与していく。GHQに浪曲やチャンバラ映画を規制され、明るく楽しい文化が奨励される風潮の中、男たちはジャズに存在意義を見出していく。服部良一はブギウギを仕掛け、さらに朝鮮戦争の勃発がジャズマンの需要に拍車をかけた。そうやって浪曲的男性文化はさらに影を潜めることになる。


 やがて朝鮮戦争の終結やモダンジャズの台頭でスィングの仕事は激減する。多くのジャズマンは歌謡曲へと移り、テレビの普及とも相まって新時代を支えていく。衰退した浪曲からは美空ひばりが、米軍キャンプからは江利チエミ、雪村いずみがTVスターとなっていった。フランク永井、松尾和子、青江三奈、和田弘とマヒナスターズ、この辺りから私もリアルな体験者だ。そして氏の語るガラパゴスロジックへと繋がっていく。

 経済成長やカラオケの普及によって大人たちはレコードを聴かなくなり、音楽業界のターゲットは子どもたちへと移った。井上陽水、吉田拓郎、GS、ユーミン、アイドルの誕生にも繋がった。自ずとジャズは聴かれなくなり、ジャズを愛する少数派は決まったお店に入り浸り、主となり、派閥ができ、聖地を築き、ジャズ特有の文化が醸成されタコツボと化す。決まった店でお決まりのミュージシャンしか聴かないのが70〜80年代。その硬直化した男達の壁を打ち壊したのが当時ネクタイ族のマドンナと言われた阿川泰子だった。そうしながらも、ジャズは緩やかに退潮し、今や特殊な部分に生き残りをかけている。

 JUJUがジャジーに熱唱し、MISIAはジャズには寄らずNYの最新バンドと融合してみせる。『SEIKO JAZZ 2』の「Fly me to the moon」を聴けばジャズというよりアメリカンポップス、それでいいのだと。戦後の大衆歌謡にはステキな血なのに“ガラパゴス”からはガンとみなされてしまうのではいけない。フランクシナトラの「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス」のメロディを、大ヒット作『A LONG VACATION』の「FUN×4」にそのまま利用した大滝詠一は確信犯だったし、ノラ・ジョーンズの出現でジャズは変化した。スティングのバックはずっと以前からジャズマンだし、マイケルもスティービーもジャズなのだ。ジャズをベースにしていなければ音楽家にはなれない、とまで氏は言い切る。何より音楽ファンが認めていかなければ、つぶしてしまうことになる。変化を拒絶し深く進化するのも悪くはない、しかし歌謡曲との親和性を否定することなど出来ないと氏は語った。

 親和性の証拠としてもう1曲。八代亜紀『MOOD』の「FRY ME TO THE MOON」。01年にしてUKソウルのレイ・ヘイデンがプロデュース&DJとして参加していたことに衝撃を受けた。同じ歌声であっても、下町や路地裏の陰鬱とした心象は微塵も無く、洗練された都会の疾走感が八代亜紀のバイブスと溶けあい心地いい。このように、非常にナチュラルにジャズは歌謡界に浸透し音楽は進化している。しかし聴き手が追いついていないと。ジャズ界の外側からこれほどのシンギュラリティ提案がなされていたことに、にわかジャズファンとして敬服せざるを得なかった。

Text:坂井広美(かわさきジャズ公認レポーター)

◎イベント概要
【かわさきジャズ2019 ジャズアカデミー】
日時:10月4日(金)13:30〜15:30
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール 市民交流室
テーマ:ジャズのガラパゴス化、あるいは戦後歌謡史
講師:川崎浩 (かわさき ひろし) / 毎日新聞学芸部
posted by kawasakijazz at 21:26| Comment(0) | レポート