かわさきジャズ 公式ブログ

2020年11月23日

【ライブレポート】11/11「Colorful JAZZ vol. 2」細川千尋、山下 伶、はたけやま裕が奏でる幸せのメロディ

 細川千尋(p)、山下 伶(クロマチック・ハーモニカ)、はたけやま裕(per)が昨年、大好評を博した、かわさきジャズ2020オリジナル企画の第2弾【Colorful JAZZ vol. 2】が11月11日にラゾーナ川崎プラザソルにて開催された。

会場には、始まる前から3人の美しいメロディを心待ちにしているオーディエンスで期待感に溢れていた。
温かい大きな拍手と共に、山下のクロマチック・ハーモニカから1曲目「Isn’t She Lovely」 がはたけやまのウィンドチャイムと細川のピアノの小粋なリズムで可愛らしく始まる。スティーヴィー・ワンダーの名曲だ。赤く情熱的な照明で、細川の左足でリズムを刻んでいるのが印象的であった。

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MCでは「昨年、来て下さった方は、いますか?」と呼びかけ、客席からは、多くの手が挙がる。3人のメンバー紹介の後に山下が「ハーモニカは、元々アコーディオン、リード楽器の仲間」と、リシャール・ガリアーノ「Tango pour Claude」で、ピアノの華麗な旋律から始まり、カホンと合わさり、クロマチック・ハーモニカから奏でるメロディに強い意志が感じられた。途中の細川のピアノと、はたけやまのパーカッションのソロで見せた山下の笑顔に、こちらまで夢の中にいるかのような温かい気持ちにさせてくれる。

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続いて、イタリア映画の曲、ヘンリー・マンシーニ「Sunflower」は、山下が2011年にクロマチック・ハーモニカを始めるきっかけになった人生を変えた思い出の曲だという。音楽短大を卒業し、フルートを吹いていた彼女は、当時音楽を辞めようと思っていた気持ちを再びこの「Sunflower」が導いてくれたのだ。彼女が最初の一音から心が持っていかれたというように、哀愁を誘うクロマチック・ハーモニカの響きが胸に染み入る。それと同時にハーモニカ発祥の地、ドイツの風景も目に浮かんでくるようだ。

はたけやまの「皆さんも、そういう人生を変えるきっかけって、ありますよね?」との問いかけにオーディエンスも、うんうんと頷く。
細川も、しばらくピアノから遠ざかっていた時に、コトリンゴのピアノを弾いて歌っている姿に
もう一度音楽をやろうと思ったという。「人生って、分からないですよね」と、彼女は言う。
まさにその通りだと私も思う。だからこそ、音楽も人生も楽しいと感じられる。
はたけやまも音楽の接点は、ピアノが最初であり、中学の吹奏楽部で打楽器に出会ったが
高校で辞めようと思っていた時に、プロの方に「打楽器、続けなさい!続けるならプロを目指しなさい」と言われて、今の彼女がある。そういう誰にでもターニングポイントは、あるものだ。

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そんなはたけやま選曲の桂枝雀師匠の出囃子「昼まま」を最初に原曲を1コーラス流し、聴かせてくれた。よく耳にする三味線と太鼓の音で、今すぐにでも落語が始まりそうな感覚になってくる。それに続き、3人でジャズアレンジした「出囃子〜昼まま」が原曲とは違う世界観で披露された。今までで一番上手くいったみたいで、大きな拍手がステージに送られ、オーディエンスの興奮冷めやらぬ中、細川選曲のポール・デスモンド 「Take Five」が演奏された。昨年の公演では、スタンダードジャズが少なかったことから選曲され、ワインレッドの照明と共に、とても切ない感じで個人的には、好きな曲調であった。

 休憩の後は、バート・バカラック 「Alfie」のゆったりとした夜眠る前の優しさに包まれるような3人のサウンドが溶け合う演奏に聴き入る。
前半の衣装から打って変わって、素敵なピンクのドレスの細川は、この「Alfie」も人生を変えてくれた大好きな一曲だという。「先日、リハーサルをしていた時に、なかなか激しめの曲が多くて、私たち、けっこう激しめの女なんじゃないかという選曲だったんですよね」という細川に会場が微笑ましい様子になる場面も。この公演で初めて音を出して、本番がいつも一番上手くいくみたいで、こちらまで幸せな気持ちになる。

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続いて、その細川のオリジナル曲「黎明(れいめい)」では、疾走感のあるサウンドで天高く昇っていくようなキラキラした感じで聴かせてくれる。ときには椅子から立ち上がり、ピアノを弾く彼女に力強さを感じる。同時に2人とのアイコンタクトでは、この曲を楽しんでいるという、今の一瞬が大切なように思えた。この曲の意味は、「夜明け」「始まり」、そして細川の父が名付けたのだそう。
はたけやまもオリジナル曲「Crossroad」では、カホンをフィーチャリングして疾走感のある圧巻のステージであった。この曲は、その名の通り、車の歌で長い時間練習、特訓をし、2人からは、はたけやまを「先生!」と呼ぶ一幕も。

その後、今回披露した曲などが入っている3人それぞれのアルバム紹介をしつつ、はたけやまが「鬼滅の刃」に詳しいことから、会場に併設されている映画館でレイトショーを観よう!などと、話題が盛り上がりをみせて和やかムードに。
そのムービーメーカー、はたけやまの選曲「よだかの星」は、文学作品、宮沢賢治「よだかの星」から取ったタイトルだといい、星になって永遠に輝き続けて高く飛び上がるようなクロマチック・ハーモニカの叙情的な3人のアンサンブルに引き込まれる。

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最後に「たくさんの方々に来て頂いて嬉しい!」とオーディエンスに伝え、デューク・エリントン「Caravan」を7拍子のアレンジと共にサビはラテンで、まるでジャングルにいるかのようなカラフルな演奏で会場の熱気が最高潮に達した。
鳴り止まない盛大な温かい拍手の中、アンコールでは、バート・ハワード 「Fly Me To The Moon」をピアノからのイントロ、クロマチック・ハーモニカの旋律、パーカッションの安定感で、しっとりとロマンティックなサウンドに酔いしれる。この曲を嫌いな人は、いない気がする。もちろん、私も大好きな曲である。


演奏を終え「また、来年お会い出来る日を楽しみにしています!ありがとうございました」と3人が笑顔で手を振って、まさにカラフルな一夜となった。

今年は、なかなかライブ、フェスティバルの開催が困難な状況だが、「かわさきジャズ2020」が開催されたことが嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいである。終演後に、オーディエンスから3人へ花束を渡す場面や細川がピースをしているシーンもあり、この世の中が平和であってほしいと願うばかりである。「ジャズは橋を架ける」、この公演に少しでも花を添えられていればと思う。

Text:Chisato / かわさきジャズ公認レポーター
photo:Tak. Tokiwa

◎公演情報
かわさきジャズ2020
「Colorful JAZZ vol. 2」
2020年11月11日(水)@ラゾーナ川崎プラザソル
出演:細川千尋(p)、山下 伶(クロマチック ・ハーモニカ)、はたけやま裕(per)
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【ライブレポート】11/10「多文化救済LIVE Air GOCIAA:)vol.3」年齢も国籍も多種多様?4時間ぶっ続け、川崎の初冬フェス 

 連携公演の【DIVERSITY ART CONNECTION多文化救済LIVE Air GOCIAA:)vol.3 〜世界へ配信えらいこっちゃ!〜Collaborate With Kawasaki Jazz 2020】が11月10日、クラブチッタ(川崎区)で開催され、約10組50人が多種多様なパフォーマンスを繰り広げた。

 入場時に受け付けスタッフに手渡された、チュッ〇〇ャプスが先端に付いた70aのソーシャルディスタンスメジャー=i手作り)を持って薄暗い会場に入ると、おなかに響くサウンドと点滅するライト、クラブさながらの雰囲気だ。設置されたテーブルには、除菌グッズのほか、声を出さずに出演者を応援できる、おもちゃのマラカス、ハンマーが置かれている。

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 午後7時、「踊り続けて20年」の黒ちゃんクラブ≠皮切りに、多種多様なステージの幕が開いた。
 小学生のグループが鬼滅の刃のキャラクター姿で軽々と華麗なアクロバットを決めると、あまりの格好良さにどよめきにも似た声が上がる。伊黒小芭内に扮した小4の二枚目君は「カツラがあるから動きにくかった」と話していたが。

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 アマビエに扮した女性が2人の少女と歌う、ボーカルユニットが癒やしの声を響かせる。
 川崎を舞台にした芝居とラップ川崎サウスサイドストーリー=A江戸時代に大師河原で行われた酒合戦の再現、ベトナム人ロックバンドの演奏とパフォーマンスが途切れることなく続く。
 圧巻だったのは3人の女性ダンサーによるバーレスク。観客に背を向け黒いマント(?)を脱ぎ捨てると露出度かなり高めな衣装で切れ味抜群のダンスを披露。某アミューズメントパーク(え?今年の干支?)の現役ダンサーの実力を遺憾なく発揮した。鬼滅の少年達がこれを見たのかどうかは定かではないが、明らかに18禁=iだと思います)。観客の目を釘付けにした。

 トリを務めたベトナム人男性歌手のNINIは、今年10月に起きたベトナム中部で起こった洪水の映像の前で歌った。

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 最後は、主催であるJDS-ARTWORKS(川崎区)のプロデューサー、黒江乃理子が「まだまだ辛い時期が続くけれど頑張っていきましょう」と呼び掛け、お開きとなった。
 午後7時に始まったライブは11時近くまでノンストップで続いた。リアルタイムで配信もしていたという。
 その間、観客はステージを楽しみながら飲んだり食べたり、スマホを触っている人もいる。子供は走り回っている。これが野外なら夏フェスだ。つまり川崎の初冬フェス=B
 全てにおいて「Air GOCIAA=えらいこっちゃ」だし、「GOCIAA=ごっちゃ」なのだが、2016年に川崎市がブランドメッセージに掲げた多様性(ダイバーシティ)≠具現化したライブだった。
 ゴッチャは、来年の2月にも開催される予定。出演者も募集している。

(Text & Photo:Nanami T / かわさきジャズ公認レポーター) 


◎公演情報
DIVERSITY ART CONNECTION 多文化救済LIVE
Air GOCIAA:) vol.3 〜世界へ配信えらいこっちゃ!〜
Collaborate with Kawasaki Jazz 2020
日時:11月10日(火)19:00 開演
会場:クラブチッタ
posted by kawasakijazz at 13:55| Comment(0) | レポート2020

【ライブレポート】11/10「多文化救済LIVE Air GOCIAA:)vol.3」@クラブチッタ

地域の団体や行政と連携し、川崎駅近くにあるCLUB CITTA'でイベントが行われた。
異国のさまざまな音楽で川崎に住む外国人と交流もできるビッグイベントだ。

MC、進行を務めるNIKKIE(ニッキー)。大洪水のあったベトナムや、ロックダウン中のインドの話なども含めてイベントの趣旨を解説した。「ゴッチャ!」の掛け声で最初のステージが始まった。

ロシア人形のような衣装で登場した、4人の女性がロシア民謡を踊る。微笑ましくも好調なスタートだ。

続いてファイナルファンタジーのSEで登場したのは男女4組の子供達。男女ペアで社交ダンスのような衣装に、ソロにはアクロバットなダンス、可愛らしさとのギャップが大きい。

BGMにジャジーなアレンジの「Sing Sing Sing」が流れるなか、MCが挟まれる。体がノってきたところで、アマビエ音頭が始まった。アマビエに扮した格好で踊り、絵描き歌まで披露するパフォーマンスは会場の子供達に大ウケ。

興奮が冷めやらない中、騒がしい音楽が流れ始めると、お次はよさこいの「ソーラン節」。派手なハッピと桃色のカツラで見た目も賑やかに盛り上がった。

「ここからは癒やしの時間」という進行と同時に、会場の照明は暗転。
キーボードの弾き語りでしっとりと始まり、その後、歌い手が登場。ステージの広さは2人には広すぎると感じたが、パワフルな声と音色がステージライトとリンクして鳥肌が立つ。まさに癒やしの時間を味わうことができた。

転換後、照明が様変わりしステージに現れたのは、なんとアニメ「鬼滅の刃」の様々な登場キャラクターのコスプレをした10人の子どもたち。本格的なコスプレと色とりどりの扇子でよさこいダンスを見せてくれた。子どもはもちろん、大人にも大ウケ。「アニメは日本の宝」と、まさに納得のMCで、異文化交流の場にとても相応しいと感じた。

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またまた雰囲気がガラッと変わり、6人の天女が登場。ひらひら舞う孔雀のような扇子と、最後は銅鑼の音とドラゴンのフォーメーションで終演。

今度は、急に現代に戻された感覚になったRAP劇。眩い光とクラブ仕様のライティングは、ここが「HIP-HOPの聖地」とも称されるCLUB CITTA’であることを思い出させてくれた。主に川崎南部を題材にしたラップを、4人の若者男子が生い立ちや社会問題についてダウのニュアンスとも感じとれるグルーヴで披露した。

転換時BGMにはATSUSHIがカバーしたオフコースの名曲「言葉にできない」が流れる。これらにもPAの真剣さとセンスの良さが感じられ、自然と体が揺らされる。

そうこうしているうちに、また雰囲気も場所も時代も変わり、語りが始まった。昔々、川崎に存在していた大酒豪の実話を、プロフェッショナルな語り手と、琵琶の音色と、唄で演出。とてもテンポ良く耳に体に入ってくる。物語にのめり込んでしまう空気を作り出されていて圧巻だった。

その後は、現代風のバンド、異国のバンドが続々と登場。
今日本で流行っている曲や、外国で注目されているダンスなどを披露する時間。
惜しくも来日できなかったバンドは映像での出演となった。

これまで、異文化・異年代のパフォーマンスを凝縮して一日で味わったのは初めてであった。慌ただしく数々のパフォーマンスが始まり、そして終わり、と繰り返し見ていると、“忙しく騒がしい”現実と離れ、あえて“忙しく騒がしい”ライブに足を運ぶのも良いと感じた。

同じ「言葉」でも毛色も意味も違う。タイムスリップして、ワープして戻ってきて、、、と、そんな異例な体験ができた。音楽も文化ではあるが、「垣根」のない文化であることを世界に広げる一歩となるイベントであった。

(Text by 福場 紗代 / かわさきジャズ公認レポーター)
(Photo by Nanami T / かわさきジャズ公認レポーター)

◎公演情報
DIVERSITY ART CONNECTION 多文化救済LIVE
Air GOCIAA:) vol.3 〜世界へ配信えらいこっちゃ!〜
Collaborate with Kawasaki Jazz 2020
日時:11月10日(火)19:00 開演
会場:クラブチッタ
posted by kawasakijazz at 13:42| Comment(0) | レポート2020

【かわさきジャズライブ in 川崎アゼリア】一流の演奏がフリーで4本。川崎の贅沢な日曜日

 ガラスの吹き抜けから明るい光が差し込んでいる。JR川崎駅に直結する地下街アゼリアの広場にセッティングされた決して大きくないステージ。客席は20脚。もちろん、充分すぎるほど前後左右に空間が保たれている。

 フリーライブ【かわさきジャズライブ i n 川崎アゼリア】が11月8日に開催され、第一部の【東京交響楽団 市内巡回コンサート in アゼリア】(20分×2回)と、第二部の【歌うブギウギピアニスト 荒井伝太スペシャルライブ in アゼリア】(同)が買い物客を喜ばせた。

黒ずくめの男四人が響かせる怪しげな調べ

 定刻通りに東京交響楽団(以下、東響)のメンバー4人が黒ずくめの衣装(自前だそうです)でステージに現われた。バイオリンの廣岡克隆、鈴木浩司、ビオラの多井千洋、チェロの蟹江慶行。平均年齢30代の若いメンバーだ。
 一曲目はオリヴァー・ネルソン(1932〜1975/アメリカ)の「ストールン・モーメンツ」。マネージャーの桐原美砂が打つマラカスに導かれるように、ブラックスーツの男4人が怪しげな四重奏を明るい街内に響かせると、違和感だらけの、なんともちぐはぐな空間が広がった(誉めています)。

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 演奏が終わると廣岡が東響の紹介をしつつ、「普段はコンサート会場でクラシックを演奏しています。アドリブに聞こえる所も全て楽譜に起こしています。だから百回演奏すれば百回同じ演奏ができます」とクラシック奏者らしい控えめな冗談(?)で観客をクスリとさせる。二曲目は「枯葉」を武満徹が弦楽四重奏のためにアレンジしたもの、三曲目はピアソラの「鮫」。どちらもオリジナルとは少し違い、特別感*檮レだった。
 演奏後、4人は「3曲とも、人前で弾くことはほとんどなかった。でも、とても楽しかった」と声を揃えた。「オープンスペースは時々、お互いの音が聴き取りにくいことがあるけれど、そこは信頼関係で」と多井。

 廣岡は「本当は薄暗い照明のバーでお酒を飲みながら聞くのが良かったと思う。日曜の昼間に合っていたかは疑問です」と悪戯っぽく笑った。
 「ジャズは不慣れ」と話す割に、澄んだ音色の中に、切れ味鋭い音をちりばめ、聴き応え充分。日本を代表するオーケストラのメンバーは、「結局、何でも弾ける」をいとも簡単に証明してみせた。全身黒の衣装は、「黒いスーツにしようと話し合ったけれど、中に何を着るかは自由にした」(廣岡)ということだが、ふたを開けてみれば、全員が黒のワイシャツに黒っぽいネクタイと息ピッタリ。演奏が乱れないのは当たり前か? 
 
サービス精神は演奏と衣装にも

 後半は、エンジ色のスーツに、黒のリボンタイ、ピンクのチーフを胸にさした荒井伝太(横浜市鶴見区出身)が颯爽と電子ピアノの前に座った。かわさきジャズ2020のキーアーティスト(本人曰くかわさきジャズ親善大使・宣伝部長)であり、テーマソング「ビューティフルスウィング」の作者。「秋に染まる頃、君に会える〜シュビドゥビ〜♫」と歌詞を書けば、あの曲かと思う人も多いだろう。

 自らを歌うブギウギピアニスト≠ニ名乗る弾き語りスタイル。衣装に負けないくらい演奏も派手で、鍵盤から両手を大きく離したり、グリッサンドを頻繁に行ったり。
 オリジナル曲の他、自身が敬愛するナット・キング・コールの「モナリザ」「ラヴ」、川崎にちなんだ曲として「上を向いて歩こう」、「黄昏のビギンン」など、レパートリーが幅広い。歌の代わりに口笛を吹き、MCの最中も、「香水」や鬼滅の刃の「紅蓮華」をちりばめる。
 荒井の歌は、ちょっと聞くだけでは、日本語の歌か英語の歌か分からない。活舌は良すぎるほどだし、声も耳に心地よく通るのに、前記の歌詞も「あ〜くぅぃ〜にぃ〜そっんまるこるぉ〜きぃみぃにぃあ〜えぇるぅ」と聞こえるせいだろうか。
 ある曲では歌い終わった瞬間に投げキスをしたりと、気障っぽく見えなくもないのだが、人懐っこい笑顔で全く嫌みがない。

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 サービス精神も旺盛でミューザが販売しているマスクやTシャツをユーモアたっぷりに宣伝。演奏終了後に高齢の女性から「私も旧姓があらいで、鶴見に住んでいるの」と話しかけられると、ニコニコと会話を続け、女性を喜ばせた。

 取材にも嫌な顔一つせずに応じ、「お客様が笑顔であれば満足。荒井伝太に会えて良かったと言われるよう頑張りたいし、家族に恩返しがしたい」と話す横顔に誠実さが滲んだ。
 
 川崎駅近くで行われた素晴らしい4本のフリーライブ。1本終わるごとにスタッフが椅子を一脚ずつ丁寧に消毒する。一部の廣岡は、MCになるとマスクをする。二部の荒井の前には透明なビニールが貼られている。

 観客は座る前に検温と手指消毒。鑑賞中もマスク着用。
 演者も観客も、これらに関して不満を言う人は誰一人いなかった。寧ろ、こういう中で開催にこぎつけたスタッフに心から感謝していた。
 でも、だからこそ…。来年は思い切り大声でブラボーと叫べますように、と願わずにはいられない。

(Text& Photo:Nanami T / かわさきジャズ公認レポーター)
posted by kawasakijazz at 13:32| Comment(0) | レポート2020