かわさきジャズ 公式ブログ

2021年11月16日

【ライブレポート】10/30「しんゆりJAZZストリーム DAY1」個性あふれる4つのバンドで、幸せな時間をかみしめる。時空を旅するジャズ・フェスティバル

 10月30日、新百合トウエンティワンホールで2年ぶりのかわさきジャズ公演「しんゆりJAZZストリーム DAY1」が開催された。装いも新たに、1日4組のグループが出演するジャズ・フェスティバルになった本公演。新型コロナウイルスも落ち着き、安心した表情で会場入りする観客も多く見受けられる。ステージは、おなじみのロゴがコバルトブルーの光に包まれて映し出され、開演が待ち遠しい。

 DAY1は、今回出演するBanda Felizのトロンボーン奏者、池田雅明の司会で進行。スマートな挨拶とバンド紹介の後、いよいよ本編へ。

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 最初に登場したのは、岡崎ブラザーズ。岡崎好朗(tp)、岡崎正典(ts)兄弟の掛け合いがスリリングで楽しく、田中菜穂子(p)、伊藤勇司(b)、井川晃(ds)との息もぴったりでサウンドも充実。全編が岡崎好朗のオリジナル曲で構成されたステージだったが、ハードな曲調ながら、どこかノスタルジーを感じさせる。「Hank’s Mood」で、会場全体が小気味よいビートに酔いしれた。

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続いて演奏された「Pier 54」。「 Pier」は「埠頭」の意味で、晴れた日に埠頭から眺める波打ち際を想像させるボッサのリズムが心地いい。「C.G.E」も、アメリカの街角を思い起こさせる。ライトが夜のイメージの紺色に変わり、田中菜穂子のピアノをフューチャーした「Titania」が静かに吹き抜けるやさしい風のように演奏された。フィナーレは、会場が真っ赤な照明に染まり、情熱的な「Alstromeria」で締めくくられた。

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 続いての登場は片倉真由子トリオ。「Secret Love」、そして片倉のオリジナルである「A Dancer’s Melancholy」で片倉の洗練されたピアノの音がグラデーションのように会場全体に広がっていく。そこに佐藤ハチ恭彦(b)、ジーン・ジャクソン(ds)のリズムセクションがスマートに絡み、唯一無二のバランスをつくりあげていく。モンクの代表作の一つ「Ruby, My Dear」は、明瞭なタッチで朗々と歌い上げ、やわらかな音の揺らぎが気持ちいい。

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ラストの「Pinocchio」は、ガラッと変わってのハードなナンバーで、このトリオの世界観の広さに驚嘆した。目まぐるしく動くメロディ、各奏者のハイテクニックに圧倒された。さらに、各所で引き立てられる各楽器のインプロヴィゼーションが高揚感をもたらし、ステージは熱狂的にフィナーレなフィナーレとなった。

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 3番目はブラジル音楽界のトップミュージシャンが集うBanda Feliz。冒頭は小畑和彦(g)作曲の『Sunda Land』。とびきりクリアなサウンドで会場は爽快感に包まれた。ライトも雲の模様が入ったスカイブルーに変わり、酒井麻生代のフルートと池田雅明のトロンボーンの掛け合いが心地よく、小畑の卓越したインプロヴィゼーションや石川智の華やかなパーカッションも「ブラジル気分」を演出していた。 

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続いて、ボサノヴァのナンバーでは最もポピュラーと言われているジョビンの『イパネマの娘』。緩やかなエイトビートに身を委ねて聴いた。次に、池田作曲の「Água e Peixes」。アマゾン川で、魚が飛び跳ねる場面をイメージした曲で、目を閉じて聴くとブラジルの大自然が目に浮かぶようなナンバー。そして佐藤作曲『蒼の彼方』。ダイビングをする佐藤の印象から書かれた曲。ライトも群青色に変わり、物悲し気なメロディからベースやピアノのひそやかなインプロヴィゼーションを経て静かに、そしてうねるように歌われる。

 ラストは酒井作曲の「Neste Pais」。冒頭のひそやかなフルートとトロンボーンのメロディから、軽快なリズムに乗った一糸乱れぬアンサンブルが見事。会場全体がブラジルへの旅を楽しんだかのような余韻に浸った。

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 最後に登場したのが山本剛トリオ。司会の池田から「日本のジャズ界をずっと引っ張ってくれた方、この方たちの背中を見て日本のジャズを継いでいこうと思った」と紹介があり、大きな拍手が送られた。山本剛(p)、香川裕史(b)、大隅寿男(ds)の豊かな音楽性からくる歌心あふれる演奏に、池田の言葉の重みを感じる。

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1曲目「Midnight Sure」から、名人芸といえるインプロヴィゼーションが続出し、ステージから目が離せない。「Look Of Love」も煌びやかに曲が進み、シンプルだが歌心あふれる華麗なドラムソロが演奏に華を添えた。「Misty」では、叙情的に歌い上げるピアノと静かに支えるリズムセクションの絶妙なバランスに、このままずっと聴いていたくなる心地よさを感じる。そして、ハロルド・アーレンの「Over The Rainbow」を香川のストリングベースのソロで披露。その温かみのある音に癒されるひとときになった。

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 フィナーレは、メリー・フォードの「世界は日の出を待っている」を心躍るアレンジで演奏。洗練された美しい音に、会場がこの上ない幸福感に包まれた。4時間のフィナーレを見事に締めくくった。

 アンコールとして、出演メンバー全員で、「C Jam Blues」を演奏。観客も手拍子しながら一緒に楽しみ、会場は一体となった。13分にわたるセッションがあっという間の時間に感じられた。これぞジャズ・フェスティバルの醍醐味だ。一人一人がソロをとり、お互いのコール&レスポンスやインプロヴィゼーションの応酬は実に聴きごたえがあり、この時間、この場所でしか味わえない喜びを皆で共有した。終了後は奏者同士でグータッチ。「ジャズは橋を架ける」の言葉が体現された光景だった。

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 個性あふれる4つのバンドが一つの会場に集まってつくり出した珠玉の時間。それぞれのバンドの演奏に、様々な時間、様々な風景をイメージし、あっという間の4時間で時空を越える小旅行に出た気分を味わった。来年以降も、こんな素敵なジャズ・フェスティバルが開催されることを願っている。

TEXT:小町谷 聖(かわさきジャズ公認レポーター)
PHOTO:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「しんゆりJAZZストリーム DAY1」
日時:2021年10月30日(土)
会場:新百合トウェンティワンホール
出演:
岡崎ブラザーズ:岡崎好朗(tp)、岡崎正典(ts)、田中菜緒子(P)、伊藤勇司(B)、井川晃(Ds)
片倉真由子トリオ:片倉真由子(p)、佐藤ハチ恭彦(b)、ジーン・ジャクソン(ds)
Banda Feliz:酒井麻生代(fl)、池田雅明(tb)、小畑和彦(g)、加藤実(p)、織原良次(b)、石川智(Per)
山本剛トリオ:山本剛(p)、香川裕史(b)、大隅寿男(ds)

----SET LIST----
【岡崎ブラザーズ】
1: Hank’s Mood
2: Pier 54
3: C.G.E
4: Titania
5: Alstromeria

【片倉真由子トリオ】
1: Secret Love
2: A Dancer’s Melancholy
3: Ruby, My Dear
4: Pinocchio

【Banda Feliz】
1: Sunda Land
2: イパネマの娘
3: Água e Peixes
4: 蒼の彼方
5: Neste Pais

【山本剛トリオ】
1: Midnight Sure
2: Look Of Love
3: Misty
4: Over The Rainbow
5: 世界は日の出を待っている

ENCORE
EN: C Jam Blues
posted by kawasakijazz at 08:55| Comment(0) | レポート2021