かわさきジャズ 公式ブログ

2021年11月25日

【ライブレポート】11/11「JAZZ 70+ 〜ジャズの神髄」鈴木良雄×伊藤君子×山本剛 それぞれのキャリアがシンクロして広がる美しく豊かな音世界 

 かわさきジャズ音楽公演プログラム【JAZZ 70+ ジャズの神髄】が、11月11日(木)15:00〜、ラゾーナ川崎プラザソルで行われた。

 卓越した演奏技術と「チンさん」のニックネームで幅広い音楽ファンから親しまれる日本ジャズ界のリーダー的存在、ベーシストの鈴木良雄、ソウルフルでメロディックな歌唱スタイルでジャズ・ヴォーカル界の至宝として際立つ、ヴォーカリストの伊藤君子、ブルージーで歌心あふれるプレイが多くのファンをもつピアニストの山本剛。70代を迎えた今もジャズ・シーンの一線で活躍し続ける3人のセッションが、どんな音世界に連れて行ってくれるのか期待が高まる。

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 第1部は鈴木と山本のデュオ。鈴木の軽妙な語り口でのMCから始まり、「コロナとて そろそろ収束 するコロナ」のウィットに富んだ一句で会場が笑いに包まれる。最初に鈴木のオリジナルを2曲演奏。「ゲームボーイ」は、山本の奏でるさざ波のようなインプロヴィゼーションが印象的で、後半はお互いを高め合いながら演奏しているかのようなユニゾンやコール&レスポンスに会場のボルテージも上がった。「キスイズ オン ザ ウインド」はミディアム・テンポで、甘く語りかけるような珠玉のナンバー。チョコレートを口の中で溶かしているような気分で聴いた。

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 続いて、1980年代後半放送されていたトーク番組「Ryu’s Bar気ままにいい夜」のテーマ曲として山本が演奏していたバド・パウエルの「クレオパトラの夢」。ステージのライトも青から赤へ。情熱的なトーンと激しいシンコペーションのリズムがエキゾシズムを演出していた。

 4曲目は、1950年代ナット・キング・コールが歌って大ヒットしたレイ・エバンス/ジェイ・リビングストンの「モナ・リザ」。味わい深いプレイに、会場は静かに深い感動で包まれた。鈴木の技巧的なソロが続き、山本のピアノが力強いタッチで乗っかると、1部のフィナーレ、アフロキューバンジャズの名曲、イワン・ミルズ/デューク・エリントンの「キャラバン」が始まった。ベースとピアノだけなのに、クラーベやボンゴが聴こえてくるかのようなリズムのキレ、卓越したアンサンブル。ラストに差し込んだオマージュ的なフレーズにも余裕を感じる。

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  第2部から、伊藤が姿を現す。最初は山本と2人で、ジョージ・ガーシュイン/イラ・ガーシュインの「ザ マン アイ ラブ」をプレイ。潤いと落ち着きがある伊藤の歌声に、会場からため息が漏れる。続くエロール・ガーナ―の「ミスティ」は思い入れのようなものを強く感じたが、MCで、閉店して久しい六本木のミスティという店を思い出しながら緊張の中でも懐かしい気持ちで歌ったとのこと。

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 3曲目から鈴木が入り、トリオでの演奏。ノーマン・ギンベル/ミッシェル・ルグランの「ウォッチ ホワッツ ハプンズ」を、鈴木と山本が繰り出す凛としたビートに乗って、伊藤が爽やかに歌い上げる。続くアラム アンド マリーン・バーグマン/ミッシェル・レグランドの「ホワット アー ユー ドゥーイング ザ レスト ユア ライフ」は、「残りの人生、君はどう過ごすの?僕と共に過ごしてくれないか」と優しく語りかける美曲だが、叙情的に歌い上げる伊藤や、優しい音色でその声に寄り添う鈴木、山本からそのメッセージがクリアに伝わり、会場は再び深い感動に包まれた。5曲目はノーマン・ギンベル/トゥーツ・シールマンスの「ブルーゼット」。夢見るようなジャズワルツで、伊藤の流れるようなアドリブや歌心がつまったハイトーンボイスが絶品だった。

 ラストはスタンダード、コール・ポーターの「ラブ フォー セール。とにかく3人とも楽しそうで、自然にこちらもウキウキしてくる。山本のインプロヴィゼーションも、それを支える鈴木のベースも、2人に笑顔で目をやりながら明るいトーンで歌い上げる伊藤も、全てが絶品で会場にも笑顔の花が咲いた。

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 当然アンコールの大きな拍手。鈴木のオリジナル「ザ モメント」を25年ぶりに歌う。冒頭を聴いただけで、伊藤がこの曲を大切に思っていることが伝わり、キャリアを積み重ねた今の声の美しさを再認識した。鈴木と山本の透明感のあるプレイも、伊藤の歌声へのリスペクトのように聴こえた。

 終了が告げられても立ち上がる観客もいない。「もう一曲何かやりますか?」という伊藤の問いかけに、大きな拍手。ルイ・アームストロングの名曲、ジョージ・ダグラス/ジョージ・デイビット・ワイスの「この素晴らしき世界」を歌う。最初は、方言を織り交ぜて日本語で歌うウィットさを見せ、ラストは3人のキャリアを物語る素晴らしい一体感でのアンサンブルで素敵な余韻を残してライブ終了。

 あっという間の2時間。3人がお互いをリスペクトし合い、楽しそうに演奏する姿に、背中を押され、勇気をもらった気分になった。「ジャズの神髄」は、キャリアを重ねて磨かれた技術のみだけでなく、その技術のシンクロによって広がる美しく豊かな音世界と、そこから生まれるたくさんの笑顔だった。70+の+は、Over70の意味だけではなく、3人の積み重ねてきたキャリアを+(プラス)させてつくり上げたステージ、という意味が大きかったのだろうと思った。

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Text:小町谷 聖(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「JAZZ 70+〜ジャズの神髄」
日時:2021年11月11日(木)
会場:ラゾーナ川崎プラザソル
出演:鈴木良雄、伊藤君子、山本剛

<SET LIST>
1. Game Boy
2. Kisses On The Wind
3. Cleopatra’s Dream
4. Mona Lisa
5. Caravan

6. The Man I Love
7. Misty
8. Watch What Happens
9. What Are You Doing The Rest Of You Life?
10. Bluesett
11. Love For Sale

Encore
E1. The Moment
E2. What a Wonderful World
posted by kawasakijazz at 10:43| Comment(0) | 日記