2019年10月16日

【レポート】10月4日 ジャズアカデミー「J−ジャズの“ガラパゴス化”を回避する秘策とは」

 10月4日、ミューザ川崎シンフォニーホール市民交流室にて今年も【ジャズアカデミー】が開催された。第1回講座のタイトルは「ジャズのガラパゴス化、あるいは戦後歌謡史」。講師は毎日新聞学芸部の名物音楽記者で11月の【佐山雅弘メモリアル・コンサート「ピアノ6連弾」】にも携わっておられる川崎浩氏。
 スクリーンを備え広々とした市民交流室が約100名の参加者でほぼ埋め尽されたこの日。男性は大半が60代以上、女性は筆者と同じ50代が中心。青春時代はアイドル全盛であり、そして90年代に起こった日本の一大ジャズブームメントの頃に20〜30代だった彼らは、昨今のジャズ絶滅危惧種論や“ガラパゴス”という一瞬はっとするタイトルにどんな思いを抱いたのだろう。

プロ達が分かりやすくジャズをレクチャーする全4回のジャズ講座【ジャズアカデミー】、今年も満員御礼写真は2019年の記念すべき初回に講師を務めてくださった、毎日新聞学芸部の川崎浩さん。アンクルトリスのシャツが素敵です時代背景を絡めながらJジャズ史をたっぷりと語ってくださいました️明日はいよいよ最終回、トロンボーン奏者の池田雅明さんとテナーサックス奏者の三木俊雄さんがご登壇です

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 川崎氏は懐かしいアンクルトリスをあしらったアロハシャツ姿。マイクを勧められるも「声が大きいから要らないよ。」と、休憩もそこそこに2時間余りを熱弁。SP盤を転写したCDを流し歌謡史解説を交え大正期から順に聴き比べていく。「日本初のジャズには爆笑しますよ。」と、33年録音の民謡が流れ出すと、おけさもカッポレもジャズ!? という驚きと斬新さに沸いた。大正デモクラシー頃の奏者や歌い手はまさに自由闊達でのびのびとした印象だ。昭和に入るとフランク永井の歌声でノスタルジーに浸る。参加者はひたすら曲と解説に聴き入った。

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 曲の合間に時代背景と音楽との密接な繋がりが語られる。戦前から存在する軍楽隊、特に海軍はラジオ短波の影響を受け様々な国の音楽を吸収していった。原信夫や宮間利之たち多くのジャズマンが軍楽隊で鍛えられ結果的にジャズの発展に大きく寄与していく。GHQに浪曲やチャンバラ映画を規制され、明るく楽しい文化が奨励される風潮の中、男たちはジャズに存在意義を見出していく。服部良一はブギウギを仕掛け、さらに朝鮮戦争の勃発がジャズマンの需要に拍車をかけた。そうやって浪曲的男性文化はさらに影を潜めることになる。


 やがて朝鮮戦争の終結やモダンジャズの台頭でスィングの仕事は激減する。多くのジャズマンは歌謡曲へと移り、テレビの普及とも相まって新時代を支えていく。衰退した浪曲からは美空ひばりが、米軍キャンプからは江利チエミ、雪村いずみがTVスターとなっていった。フランク永井、松尾和子、青江三奈、和田弘とマヒナスターズ、この辺りから私もリアルな体験者だ。そして氏の語るガラパゴスロジックへと繋がっていく。

 経済成長やカラオケの普及によって大人たちはレコードを聴かなくなり、音楽業界のターゲットは子どもたちへと移った。井上陽水、吉田拓郎、GS、ユーミン、アイドルの誕生にも繋がった。自ずとジャズは聴かれなくなり、ジャズを愛する少数派は決まったお店に入り浸り、主となり、派閥ができ、聖地を築き、ジャズ特有の文化が醸成されタコツボと化す。決まった店でお決まりのミュージシャンしか聴かないのが70〜80年代。その硬直化した男達の壁を打ち壊したのが当時ネクタイ族のマドンナと言われた阿川泰子だった。そうしながらも、ジャズは緩やかに退潮し、今や特殊な部分に生き残りをかけている。

 JUJUがジャジーに熱唱し、MISIAはジャズには寄らずNYの最新バンドと融合してみせる。『SEIKO JAZZ 2』の「Fly me to the moon」を聴けばジャズというよりアメリカンポップス、それでいいのだと。戦後の大衆歌謡にはステキな血なのに“ガラパゴス”からはガンとみなされてしまうのではいけない。フランクシナトラの「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス」のメロディを、大ヒット作『A LONG VACATION』の「FUN×4」にそのまま利用した大滝詠一は確信犯だったし、ノラ・ジョーンズの出現でジャズは変化した。スティングのバックはずっと以前からジャズマンだし、マイケルもスティービーもジャズなのだ。ジャズをベースにしていなければ音楽家にはなれない、とまで氏は言い切る。何より音楽ファンが認めていかなければ、つぶしてしまうことになる。変化を拒絶し深く進化するのも悪くはない、しかし歌謡曲との親和性を否定することなど出来ないと氏は語った。

 親和性の証拠としてもう1曲。八代亜紀『MOOD』の「FRY ME TO THE MOON」。01年にしてUKソウルのレイ・ヘイデンがプロデュース&DJとして参加していたことに衝撃を受けた。同じ歌声であっても、下町や路地裏の陰鬱とした心象は微塵も無く、洗練された都会の疾走感が八代亜紀のバイブスと溶けあい心地いい。このように、非常にナチュラルにジャズは歌謡界に浸透し音楽は進化している。しかし聴き手が追いついていないと。ジャズ界の外側からこれほどのシンギュラリティ提案がなされていたことに、にわかジャズファンとして敬服せざるを得なかった。

Text:坂井広美(かわさきジャズ公認レポーター)

◎イベント概要
【かわさきジャズ2019 ジャズアカデミー】
日時:10月4日(金)13:30〜15:30
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール 市民交流室
テーマ:ジャズのガラパゴス化、あるいは戦後歌謡史
講師:川崎浩 (かわさき ひろし) / 毎日新聞学芸部
posted by kawasakijazz at 21:26| Comment(0) | レポート
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