かわさきジャズ 公式ブログ

2021年11月17日

【ライブレポート】10/31「しんゆりJAZZストリーム Day2」〜コロナ禍も一段落、音楽を演奏できるミュージシャンと生演奏を聴ける聴衆の喜びが共に伝わってきた一夜〜

コロナ禍で軒並みジャズフェスが中止になる中、緊急事態宣言とその後のリバウンド防止措置も明けた10月最後の週末、「かわさきジャズ2021」のコンサートプログラムの冒頭を飾る「しんゆりJAZZストリーム」が2日間にわたり開催された。そのDay2を聴いてきた。

会場の「新百合21ホール」は小田急線新百合ヶ丘駅からすぐ近くの「新百合21ビル」にある。地下1階の「新型コロナワクチン接種会場」の案内看板が目を引く。その横の階段を降りた地下2階の多目的ホールがコンサート会場。

新型コロナの感染防止を意識してゆったり目に配置された座席の数は300席くらい。前半分はパイプ椅子を並べ、後ろ半分は段々に設えられた座席。それが徐々に埋まって、ラストの北村英治のユニットではほぼ一杯となる盛況。新型コロナのパンデミックも収束して、ホールに客足が戻りつつあることを実感する。

会場が暗転して、舞台袖から現れた司会者は、かわさきジャズの企画委員をしているトロンボーンの池田雅明。持ち前の明るい声で来場を感謝する短いスピーチに続いて、ミュージシャンを迎え入れる。

★1st 安ヵ川大樹トリオ「Scene of Jazz」:石井彰(p) 安ヵ川大樹(b) 大坂昌彦(ds)
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最初のユニットは「Scene of Jazz」というユニット名で活動しているベースの安ヵ川大樹のトリオ。今回のセットリストは今年の6月にリリースされた安ヵ川のアルバム「Colors」の収録曲が中心。

まずドラムスの大坂のフリーな感じのイントロから始まったのは「Afro Blue」。肩の力の抜けた感じの石井のピアノが流れるように美しい。

次は「Golden Earrings」。テンポを自由にとったイントロで始まる石井のリラックスしたピアノ、安ヵ川のメロディアスなベースソロが心に沁みる。ミディアムテンポのスウィングで、ピアノトリオの楽しさが伝わってくる。

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3曲目は今年9月に亡くなったベーシスト、ジョージ・ムラーツに捧げた安ヵ川のオリジナル「Blues for George」。静かなピアノのテーマから安ヵ川がアルコで鎮魂のメロディーを奏でる。静謐で、心が浄化されるようなトリオの演奏に、会場は水を打ったように静まり返る。

4曲目は打って変わって8ビートのロックリズムで「Sweet Georgia Brown」。ドラムスのイントロから安ヵ川がいきなり激しいベースソロ。石井は立ち上がって右手でピアノの低音弦を押さえるミュート奏法でアクセントを付ける。大坂のドラムソロも今日一番の熱を帯びる。

ラストは「Look for the Silver Lining」。「Silver Lining」とは雲に隠れた太陽に照らされた雲の端が銀色のラインのように光って見えることで、「雲の向こうには太陽がある、コロナ禍の中でも希望を持とう」という気持ちを籠めた、この時期に相応しい選曲でセットを締めくくった。

【set list】
Afro Blue (Mongo Santamaria)
Golden Earrings (Victor Young)
Blues for George (安ヵ川大樹)
Sweet Georgia Brown (Ben Bernie)
Look for the Silver Lining (Jerome Kern)


★2nd 浜崎航with松本茜トリオ:浜崎航(ts,ss,fl) 松本茜(p) パット・グリン(b) 広瀬潤次(ds)
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2セット目はカルテット編成。気心知れた浜崎航・松本茜のコンビが直球ジャズを聴かせてくれる。

まず快適なスウィングで、エリントンナンバー「The Intimacy of the Blues」から。浜崎のソプラノサックスの明るい音色が客席一杯に広がる。客席から見ていると、椅子に真っ直ぐに座ったピアノの松本の姿勢のいいのが目を引く。ピアノソロが、広瀬のスネアの一撃で急にピアニシモになって、そこから徐々にクレッシェンドしていく。このドラマチックな展開がたまらない。1stセットでは硬さが見られたお客さんも、ソロの終わりに盛大に拍手するようになってきた。

次は「Night and Day」。アップテンポのスウィングで軽快に飛ばす。テーマをトリオで演奏したあと、サビから浜崎がテナーで登場する。ソロに入るとき、パットが半速になろうとして松本がそれに付いていきかけるが、広瀬がアップテンポに戻す。こんな駆け引きもジャズの醍醐味だ。

3曲目は松本のオリジナルで「Contact」。アルバム「Oh, Lady be good」に収録されている美しいワルツ。彼女の作曲の才能には目を見張るものがある。浜崎のソプラノの透明感のある音色がいい。ピアノソロの間はステージ袖に引っ込んで、作曲者に敬意を表して十分なスペースをピアノトリオの演奏に与える。

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次はミシェル・ルグランの曲を2曲。「大変有名だから、ご存じだったら拍手を」と浜崎が言って始まったのは「シェルブールの雨傘」。フルートでテーマを吹くと、客席から遠慮がちに拍手が起きる。「意外に少ないですね」と笑わせておいて、すぐ続けて「You Must Believe in Spring」。「長く苦しかったコロナ禍から脱出して早く春が来ますように」というミュージシャン共通の思いを代弁するかのように、最後はフルートのロングトーンで締めくくる。

ラストはこのバンドのファースト・アルバムのタイトルにもなっているオリジナル曲「Big Catch」。楽しさ溢れる曲で、ジャズの楽しみを存分に味わわせてくれる。パットが長身を折り曲げるようにスウィンギーなベースソロを聴かせる。ラストはピアニシモから盛大に盛り上げて終わる。

ロビーには出演者のCDの販売コーナーがあって、多くの方が手に取っていた。

【set list】
The Intimacy of the Blues (Billy Strayhorn)
Night and Day (Cole Porter)
Contact (松本茜)
Les Parapluies de Cherbourg (Michel Legrand)
You Must Believe in Spring (Michel Legrand)
Big Catch (浜崎航・松本茜)


★3rd 平賀マリカwith「チーム ジョイア」:ハクエイ・キム(p) 太田剣(as,ss,bcl) 会田桃子(vln)
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3セット目はヴォーカルが登場。平賀マリカのトリオ「チーム ジョイア」。ピアノ、管、ヴァイオリンという珍しい編成で、クラシックからラテンまでミックスした個性的なアレンジを追求したいと結成された。昨年5月にリリースされたアルバム「Jóia」の収録曲を中心としたプログラム。

まずアルバム1曲目に収録されている「Yesterdays」から演奏が始まる。スリリングなアレンジ。早速平賀のスキャットが炸裂する。ベース、ドラムスがいないが、ハクエイ・キムのピアノの重厚な左手と抜群のタイム感覚がそれを補って余りある。

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2曲目は「Sway」。「キエン・セラ」の名前の方が通りがいいかも知れない。会田桃子の情熱的なヴァイオリンが聴衆の耳を釘付けにする。

ラテンナンバーが続いて、3曲目は「Amapola」。太田剣のバスクラリネットの深い音から始まる。平賀の伸びのある歌声が会場を魅了する。

ジャズミュージシャンは皆、コロナ禍で仕事が激減して苦しい生活を送ってきた。平賀も自分はもう必要とされてないのではないか、とまで思いつめたという。平賀がMCで、突然訪れた潤沢な時間の過ごし方をメンバーそれぞれに尋ねると、ハクエイはF1の映画に再びハマり、会田は料理の配信、太田はCD制作や作曲、平賀自身は海外とのオンライン呑み会などで過ごしたという。

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演奏に戻って、映画「バグダッド・カフェ」のテーマ曲「Calling You」。サビの部分で、「あなたを呼び続けているの、私の声が聞こえない?」という歌詞が、平賀の良く伸びる高い声で一層胸を打つ。

続けてファンキーなアレンジで、マット・デニスの「Angel Eyes」。ここでも太田のバスクラリネットの低音と、会田の情熱的なヴァイオリンが、平賀の絞り出すように歌う失恋の歌のブルーな雰囲気をさらに盛り上げる。

次は「ハレルヤ」。ヘブライ語に由来し、ユダヤ教において神を賛美する歌。アルバムのレコーディングで半日かかったという大曲。太田はソプラノサックス。平賀は歌詞の意味を噛みしめるように、丁寧に歌う。会場もしんとして聴き入っている。終わると盛大な拍手が起きる。

ラストは元気よく「Nica's Dream」。平賀が力強く歌い上げ、それに太田のアルトと会田のヴァイオリンが糾える縄のごとく絡んでいくさまは圧巻だった。

【set list】
Yesterdays (Otto Harbach/Jerome Kern)
Sway (Quien Sera) (Pablo Ruiz Beltran)
Amapola (Roldan Luis/Maria Lacalle)
Calling You (Robert Telson)
Angel Eyes (Earl Brent/Matt Dennis)
Hallelujah (Leonard Cohen)
Nica's Dream (Horace Silver, Weaver Copeland)


★4th 北村英治スーパーカルテット:北村英治(cl) 高浜和英(p,vo) 山口雄三(b) 八城邦義(ds)
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コンサートの最後を飾るこのセットを楽しみに来られた往年のファンも多かったのではないか。会場は人が増えて、空席が見えないくらいに埋まる。北村英治は92歳。矍鑠として、クラリネットの音色は衰えを知らない。演奏後のインタビューで、元気の秘訣は、と聞かれて、お酒を飲むよりクラリネットを演奏している方が楽しい、そして気の合った仲間と付き合うこと、と答えていた。

最初は「Rose Room」。1917年の懐かしいスウィングナンバー。北村はマイクから離れてクラリネットを吹くのだが、ほぼ生音なのに会場の隅々まで届く音量で、その柔らかく艶のある音に客席全体がうっとりと聴き入る。

次の「What a Wonderful World」はピアノの高浜和英が弾き語りを披露する。よく伸びて雰囲気のある歌声はまさにベテランの味だ。

次は、必ずやらないといけない曲、と言って「小さな花(Petite Fleur)」。シドニー・ベシェの作曲で、日本では1959年にザ・ピーナッツがカバーしてデビューしたことでも知られる。ミディアムテンポのスウィングで、古き良き時代にタイムスリップしたような、リラックスした好演。

次は北村のオリジナルで「さつきに寄せて」。丹精込めてさつきを育てている北村の同窓生がいて、美しい生き方をしているなぁ、と感じて作曲したという。爽やかなテーマの曲で、ボサノヴァで軽やかに演奏する。

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5曲目は「枯葉」。これも超スタンダード。ピアノの高浜が一生懸命歌詞を覚えたというフランス語で歌う。「ニューカレドニアに演奏に行ったとき、このフランス語の枯葉が大いにウケて、終演後にお客さんがたくさんフランス語で話しかけてきて全然分からなかった」というエピソードを北村が楽しそうに語る。後半はアップテンポのスウィングになって英語歌詞で歌い、最後は再びフランス語に戻る。

ラストは2曲続けて、ベニー・グッドマンの演奏で有名な定番曲「Memories of You」、そして八城のドラムスをフィーチャーした「Sing, Sing, Sing」。後者では会場から手拍子が起きる。八城の長いドラムソロに会場が大いに沸いて、最後にドラムスをバックにした北村のクラリネットソロで締めくくった。

【set list】
Rose Room (Art Hickman)
What a Wonderful World (Louis Armstrong)
Petite Fleur (Sidney Bechet)
さつきに寄せて (北村英治)
Autumn Leaves (Jacques Prévert, Johnny Mercer/Joseph Kosma)
Memories of You (Eubie Blake)
Sing, Sing, Sing (Louis Prima)

最後に出演者全員がステージに上がってジャムセッション。曲は「All of Me」。平賀の歌に続いて、メンバーがそれぞれにソロを回す。司会の池田もトロンボーンを持って登場。北村を中心に和気藹々のセッションで、会場は盛大な手拍子と共に沸きに沸いて、「しんゆりJAZZストリーム」2日目は幕を閉じた。ようやくホールで集まって音楽ができる、音楽が聴けるというミュージシャンと聴衆の喜びが伝わってくるようだった。

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それぞれのセットのMCで、ミュージシャンは異口同音に「コロナ禍の中で仕事が減って大変だったが、かわさきジャズのホール公演が開催できてファンの皆様が戻って来てくれたことに感謝している。ジャズクラブにも是非足を運んで欲しい」と言っていたことが印象に残った。

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TEXT:Ikeda Nori(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「しんゆりJAZZストリーム DAY2」
日時:2021年10月31日(日)
会場:新百合トウェンティワンホール
出演:
安ヵ川大樹トリオ:石井彰(p)、安ヵ川大樹(b)、大坂昌彦(ds)
浜崎航with松本茜トリオ:浜崎航(ts、ss、fl)、松本茜(p)、パット・グリン(b)、広瀬潤次(ds)
平賀マリカwith”チーム ジョイア“:ハクエイ・キム(p)、太田剣(as、ss、bcl)、会田桃子(vln)
北村英治スーパーカルテット:北村英治(cl)、高浜和英(p)、山口雄三(b)、八城邦義(ds)
posted by kawasakijazz at 11:28| Comment(0) | レポート2021
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