かわさきジャズ 公式ブログ

2021年11月22日

【ライブレポート】11/6「Colorful JAZZ vol. 3」細川千尋、山下 伶、はたけやま裕、猪居亜美の美しいメロディから織りなすジャズ世界

 細川千尋(p)、山下 伶(クロマチック・ハーモニカ)、はたけやま裕(per)、ゲストに猪居亜美(g)を迎え、かわさきジャズ2021オリジナル企画の第3弾【Colorful JAZZ vol. 3】が11月6日、昭和音楽大学ユリホールにて開催された。会場には、昨年も大好評を博した叙情的な演奏を心待ちにしているオーディエンスで温かい雰囲気の中、期待感に包まれていた。

 盛大な拍手と共に、シックな装いで登場した細川、山下、はたけやまが最初に演奏した楽曲は、スティーヴィー・ワンダーの名曲「Isn’t She Lovely」 。ジャジーな細川のピアノから始まり、はたけやまのウィンドチャイムが重なり、山下のクロマチック・ハーモニカのメロディが小粋なリズムで思わず身体を揺さぶらずにはいられないグルーブを生み出していた。

ColorfulJazz3_01S.jpg

 MCでは、自己紹介と共に細川が「会場が母校ということで、よく試験を受けていたが、今回は拍手がファンの方で嬉しい!」、山下は「凄く響きが良い!」、はたけやまも「今回は、生音で前回まではマイクを通していたが、より一層楽しめる!」と嬉しそうに今から特別なライブになることを約束してくれるようにColorful JAZZへと誘ってくれる。

ChihiroHosokawa03S.jpg

 続いて、ジャズのスタンダードナンバー「チュニジアの夜」。ピアノのダークな音色に森の中にいるかのような世界観で一気に引き込まれる。クロマチック・ハーモニカとハイハットのリズムが心地良く感じられ、クライマックスでは、ピアノの力強さも印象的であった。

 次に、山下の最新アルバムに収録されている映画『ティファニーで朝食を』で有名な「ムーン・リヴァー」をロマンティックなクロマチック・ハーモニカのサウンドで聴かせてくれる。ビアノとウィンドチャイムが切なさを表現した音で寄り添い、エモーショナルに感じられ酔いしれる。演奏前に山下は、「(映画の)冒頭がクロマチック・ハーモニカで始まるのをご存じでしたか?」と問いかけ、オーディエンスに名曲がクロマチック・ハーモニカから始まることを教えてくれた。3人が奏でる「ムーン・リヴァー」を思い出しながら大好きな女優、オードリー・ヘプバーンの作品を絶対に観てみようと思った。

ReiYamashita01S.jpg

 そんな余韻に浸りながら続いては、ミシェル・ルグラン「キャラバンの到着」。アグレッシブなカホンから始まり、疾走感のあるピアノとクロマチック・ハーモニカが名曲を彩る。特に、はたけやまが口ずさみ、3人が演奏を本当に心から楽しんでいるのが印象的であった。また、この曲は私の大好きな映画『ロシュフォールの恋人たち』のBGMとして作曲されたもので、観直してみたいと思う。そんな気持ちにさせてくれる出逢いもあるからライブは嬉しくて日々の喧騒から抜け出させてくれる素晴らしいものであると実感出来る。

 前半最後は、はたけやまがスペインのシギリージャのリズムをアサラトという楽器で紹介し、軽快なリズムで、モンゴ・サンタマリア「アフロブルー」をスパイシーな曲調で演奏した。

YuHatakeyama01S.jpg

 後半も温かい拍手と共に3人の装いが公演名の【Colorful JAZZ】のように細川はオレンジ、山下はピンク、はたけやまはブルーと、カラフルで登場し、オーディエンスの期待感も、より高まる。

 後半最初は、はたけやまが前半よりオーディエンスに近い演奏位置で、カホンから始まる「クロスロード」。はたけやまのオリジナル曲である。はたけやまが右足の鈴と突き抜けていくようなハイハットを鳴らし、ピアノとクロマチック・ハーモニカとの一体感にオーディエンスも最高の気分に包まれた。

 続いて、はたけやまが柳家花緑師匠の出囃子「お兼晒し」をアレンジした楽曲を演奏する前に原曲を聴かせてくれた。それから演奏されたアレンジ曲は、はたけやまの「1.2.3」の掛け声からカホン、ピアノ、クロマチック・ハーモニカへ完全にジャズに変化されており、お洒落な小粋なリズムで、オーディエンスを楽しませてくれた。私も落語が好きなので、ずっと聴いていたい感覚になったのであった。

ColorfulJazz3_02S.jpg 

 そして、ここで大きな拍手と共にゲストの猪居が登場する。「クラシック専門でジャズは初めて」と自己紹介をし、レオン・ラッセル「マスカレード」を優しく温かいギターサウンドで会場全体を包み込む。また、自然とクロマチック・ハーモニカとも溶け合うようなハーモニーで細川が、この曲の演奏後に言ったように寝る前に夜に聴きたくなるような一曲である。

 続いて「Shape of My Heart」は、切ない感じでオーディエンスは皆、じっくりと聴き入る。演奏後、猪居は3人から「本当は関西弁である」と突っ込まれていたり、彼女自身は「普段は、ロックも好きだったりするので、エレキギターも弾く」などと会場を微笑ましい雰囲気にしていた。

 最後は、「ケークウォーク」の軽快なサウンドで大きな拍手がステージに送られた。アンコールでは、アストル・ピアソラ「リベルタンゴ」で哀愁漂う4人の音色が心地良く、アイコンタクトをしているのが印象的であった。盛大な拍手の中、「また、来年もお会いしましょう!」と笑顔で手を振り、素敵なまさにカラフルな公演となった。昨年よりパワーアップした【Colorful JAZZ vol. 3】、また来年も美しいジャズを奏でる彼女達の演奏を聴きたい。

Text:Chisato(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「Colorful JAZZ vol.3」
日時:2021年11月6日(土)
会場:昭和音楽大学 ユリホール
出演:細川千尋、山下 伶 、はたけやま裕 ゲスト:猪居亜美

<Set List>
1. Isn’t She Lovely
2. チュニジアの夜
3. ムーン・リヴァー
4. キャラバンの到着
5. アフロブルー
6. クロスロード
7. 出囃子「お兼晒し」
8. マスカレード
9. Shape of My Heart
10. ケークウォーク
==Encore==
Enc. リベルタンゴ
posted by kawasakijazz at 09:46| Comment(4) | レポート2021
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: