かわさきジャズ 公式ブログ

2021年11月22日

【ライブレポート】11/6「Colorful JAZZ vol. 3」細川千尋、山下 伶、はたけやま裕、猪居亜美の美しいメロディから織りなすジャズ世界

 細川千尋(p)、山下 伶(クロマチック・ハーモニカ)、はたけやま裕(per)、ゲストに猪居亜美(g)を迎え、かわさきジャズ2021オリジナル企画の第3弾【Colorful JAZZ vol. 3】が11月6日、昭和音楽大学ユリホールにて開催された。会場には、昨年も大好評を博した叙情的な演奏を心待ちにしているオーディエンスで温かい雰囲気の中、期待感に包まれていた。

 盛大な拍手と共に、シックな装いで登場した細川、山下、はたけやまが最初に演奏した楽曲は、スティーヴィー・ワンダーの名曲「Isn’t She Lovely」 。ジャジーな細川のピアノから始まり、はたけやまのウィンドチャイムが重なり、山下のクロマチック・ハーモニカのメロディが小粋なリズムで思わず身体を揺さぶらずにはいられないグルーブを生み出していた。

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 MCでは、自己紹介と共に細川が「会場が母校ということで、よく試験を受けていたが、今回は拍手がファンの方で嬉しい!」、山下は「凄く響きが良い!」、はたけやまも「今回は、生音で前回まではマイクを通していたが、より一層楽しめる!」と嬉しそうに今から特別なライブになることを約束してくれるようにColorful JAZZへと誘ってくれる。

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 続いて、ジャズのスタンダードナンバー「チュニジアの夜」。ピアノのダークな音色に森の中にいるかのような世界観で一気に引き込まれる。クロマチック・ハーモニカとハイハットのリズムが心地良く感じられ、クライマックスでは、ピアノの力強さも印象的であった。

 次に、山下の最新アルバムに収録されている映画『ティファニーで朝食を』で有名な「ムーン・リヴァー」をロマンティックなクロマチック・ハーモニカのサウンドで聴かせてくれる。ビアノとウィンドチャイムが切なさを表現した音で寄り添い、エモーショナルに感じられ酔いしれる。演奏前に山下は、「(映画の)冒頭がクロマチック・ハーモニカで始まるのをご存じでしたか?」と問いかけ、オーディエンスに名曲がクロマチック・ハーモニカから始まることを教えてくれた。3人が奏でる「ムーン・リヴァー」を思い出しながら大好きな女優、オードリー・ヘプバーンの作品を絶対に観てみようと思った。

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 そんな余韻に浸りながら続いては、ミシェル・ルグラン「キャラバンの到着」。アグレッシブなカホンから始まり、疾走感のあるピアノとクロマチック・ハーモニカが名曲を彩る。特に、はたけやまが口ずさみ、3人が演奏を本当に心から楽しんでいるのが印象的であった。また、この曲は私の大好きな映画『ロシュフォールの恋人たち』のBGMとして作曲されたもので、観直してみたいと思う。そんな気持ちにさせてくれる出逢いもあるからライブは嬉しくて日々の喧騒から抜け出させてくれる素晴らしいものであると実感出来る。

 前半最後は、はたけやまがスペインのシギリージャのリズムをアサラトという楽器で紹介し、軽快なリズムで、モンゴ・サンタマリア「アフロブルー」をスパイシーな曲調で演奏した。

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 後半も温かい拍手と共に3人の装いが公演名の【Colorful JAZZ】のように細川はオレンジ、山下はピンク、はたけやまはブルーと、カラフルで登場し、オーディエンスの期待感も、より高まる。

 後半最初は、はたけやまが前半よりオーディエンスに近い演奏位置で、カホンから始まる「クロスロード」。はたけやまのオリジナル曲である。はたけやまが右足の鈴と突き抜けていくようなハイハットを鳴らし、ピアノとクロマチック・ハーモニカとの一体感にオーディエンスも最高の気分に包まれた。

 続いて、はたけやまが柳家花緑師匠の出囃子「お兼晒し」をアレンジした楽曲を演奏する前に原曲を聴かせてくれた。それから演奏されたアレンジ曲は、はたけやまの「1.2.3」の掛け声からカホン、ピアノ、クロマチック・ハーモニカへ完全にジャズに変化されており、お洒落な小粋なリズムで、オーディエンスを楽しませてくれた。私も落語が好きなので、ずっと聴いていたい感覚になったのであった。

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 そして、ここで大きな拍手と共にゲストの猪居が登場する。「クラシック専門でジャズは初めて」と自己紹介をし、レオン・ラッセル「マスカレード」を優しく温かいギターサウンドで会場全体を包み込む。また、自然とクロマチック・ハーモニカとも溶け合うようなハーモニーで細川が、この曲の演奏後に言ったように寝る前に夜に聴きたくなるような一曲である。

 続いて「Shape of My Heart」は、切ない感じでオーディエンスは皆、じっくりと聴き入る。演奏後、猪居は3人から「本当は関西弁である」と突っ込まれていたり、彼女自身は「普段は、ロックも好きだったりするので、エレキギターも弾く」などと会場を微笑ましい雰囲気にしていた。

 最後は、「ケークウォーク」の軽快なサウンドで大きな拍手がステージに送られた。アンコールでは、アストル・ピアソラ「リベルタンゴ」で哀愁漂う4人の音色が心地良く、アイコンタクトをしているのが印象的であった。盛大な拍手の中、「また、来年もお会いしましょう!」と笑顔で手を振り、素敵なまさにカラフルな公演となった。昨年よりパワーアップした【Colorful JAZZ vol. 3】、また来年も美しいジャズを奏でる彼女達の演奏を聴きたい。

Text:Chisato(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「Colorful JAZZ vol.3」
日時:2021年11月6日(土)
会場:昭和音楽大学 ユリホール
出演:細川千尋、山下 伶 、はたけやま裕 ゲスト:猪居亜美

<Set List>
1. Isn’t She Lovely
2. チュニジアの夜
3. ムーン・リヴァー
4. キャラバンの到着
5. アフロブルー
6. クロスロード
7. 出囃子「お兼晒し」
8. マスカレード
9. Shape of My Heart
10. ケークウォーク
==Encore==
Enc. リベルタンゴ
posted by kawasakijazz at 09:46| Comment(4) | レポート2021

2021年11月17日

【ライブレポート】10/31「しんゆりJAZZストリーム Day2」〜コロナ禍も一段落、音楽を演奏できるミュージシャンと生演奏を聴ける聴衆の喜びが共に伝わってきた一夜〜

コロナ禍で軒並みジャズフェスが中止になる中、緊急事態宣言とその後のリバウンド防止措置も明けた10月最後の週末、「かわさきジャズ2021」のコンサートプログラムの冒頭を飾る「しんゆりJAZZストリーム」が2日間にわたり開催された。そのDay2を聴いてきた。

会場の「新百合21ホール」は小田急線新百合ヶ丘駅からすぐ近くの「新百合21ビル」にある。地下1階の「新型コロナワクチン接種会場」の案内看板が目を引く。その横の階段を降りた地下2階の多目的ホールがコンサート会場。

新型コロナの感染防止を意識してゆったり目に配置された座席の数は300席くらい。前半分はパイプ椅子を並べ、後ろ半分は段々に設えられた座席。それが徐々に埋まって、ラストの北村英治のユニットではほぼ一杯となる盛況。新型コロナのパンデミックも収束して、ホールに客足が戻りつつあることを実感する。

会場が暗転して、舞台袖から現れた司会者は、かわさきジャズの企画委員をしているトロンボーンの池田雅明。持ち前の明るい声で来場を感謝する短いスピーチに続いて、ミュージシャンを迎え入れる。

★1st 安ヵ川大樹トリオ「Scene of Jazz」:石井彰(p) 安ヵ川大樹(b) 大坂昌彦(ds)
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最初のユニットは「Scene of Jazz」というユニット名で活動しているベースの安ヵ川大樹のトリオ。今回のセットリストは今年の6月にリリースされた安ヵ川のアルバム「Colors」の収録曲が中心。

まずドラムスの大坂のフリーな感じのイントロから始まったのは「Afro Blue」。肩の力の抜けた感じの石井のピアノが流れるように美しい。

次は「Golden Earrings」。テンポを自由にとったイントロで始まる石井のリラックスしたピアノ、安ヵ川のメロディアスなベースソロが心に沁みる。ミディアムテンポのスウィングで、ピアノトリオの楽しさが伝わってくる。

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3曲目は今年9月に亡くなったベーシスト、ジョージ・ムラーツに捧げた安ヵ川のオリジナル「Blues for George」。静かなピアノのテーマから安ヵ川がアルコで鎮魂のメロディーを奏でる。静謐で、心が浄化されるようなトリオの演奏に、会場は水を打ったように静まり返る。

4曲目は打って変わって8ビートのロックリズムで「Sweet Georgia Brown」。ドラムスのイントロから安ヵ川がいきなり激しいベースソロ。石井は立ち上がって右手でピアノの低音弦を押さえるミュート奏法でアクセントを付ける。大坂のドラムソロも今日一番の熱を帯びる。

ラストは「Look for the Silver Lining」。「Silver Lining」とは雲に隠れた太陽に照らされた雲の端が銀色のラインのように光って見えることで、「雲の向こうには太陽がある、コロナ禍の中でも希望を持とう」という気持ちを籠めた、この時期に相応しい選曲でセットを締めくくった。

【set list】
Afro Blue (Mongo Santamaria)
Golden Earrings (Victor Young)
Blues for George (安ヵ川大樹)
Sweet Georgia Brown (Ben Bernie)
Look for the Silver Lining (Jerome Kern)


★2nd 浜崎航with松本茜トリオ:浜崎航(ts,ss,fl) 松本茜(p) パット・グリン(b) 広瀬潤次(ds)
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2セット目はカルテット編成。気心知れた浜崎航・松本茜のコンビが直球ジャズを聴かせてくれる。

まず快適なスウィングで、エリントンナンバー「The Intimacy of the Blues」から。浜崎のソプラノサックスの明るい音色が客席一杯に広がる。客席から見ていると、椅子に真っ直ぐに座ったピアノの松本の姿勢のいいのが目を引く。ピアノソロが、広瀬のスネアの一撃で急にピアニシモになって、そこから徐々にクレッシェンドしていく。このドラマチックな展開がたまらない。1stセットでは硬さが見られたお客さんも、ソロの終わりに盛大に拍手するようになってきた。

次は「Night and Day」。アップテンポのスウィングで軽快に飛ばす。テーマをトリオで演奏したあと、サビから浜崎がテナーで登場する。ソロに入るとき、パットが半速になろうとして松本がそれに付いていきかけるが、広瀬がアップテンポに戻す。こんな駆け引きもジャズの醍醐味だ。

3曲目は松本のオリジナルで「Contact」。アルバム「Oh, Lady be good」に収録されている美しいワルツ。彼女の作曲の才能には目を見張るものがある。浜崎のソプラノの透明感のある音色がいい。ピアノソロの間はステージ袖に引っ込んで、作曲者に敬意を表して十分なスペースをピアノトリオの演奏に与える。

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次はミシェル・ルグランの曲を2曲。「大変有名だから、ご存じだったら拍手を」と浜崎が言って始まったのは「シェルブールの雨傘」。フルートでテーマを吹くと、客席から遠慮がちに拍手が起きる。「意外に少ないですね」と笑わせておいて、すぐ続けて「You Must Believe in Spring」。「長く苦しかったコロナ禍から脱出して早く春が来ますように」というミュージシャン共通の思いを代弁するかのように、最後はフルートのロングトーンで締めくくる。

ラストはこのバンドのファースト・アルバムのタイトルにもなっているオリジナル曲「Big Catch」。楽しさ溢れる曲で、ジャズの楽しみを存分に味わわせてくれる。パットが長身を折り曲げるようにスウィンギーなベースソロを聴かせる。ラストはピアニシモから盛大に盛り上げて終わる。

ロビーには出演者のCDの販売コーナーがあって、多くの方が手に取っていた。

【set list】
The Intimacy of the Blues (Billy Strayhorn)
Night and Day (Cole Porter)
Contact (松本茜)
Les Parapluies de Cherbourg (Michel Legrand)
You Must Believe in Spring (Michel Legrand)
Big Catch (浜崎航・松本茜)


★3rd 平賀マリカwith「チーム ジョイア」:ハクエイ・キム(p) 太田剣(as,ss,bcl) 会田桃子(vln)
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3セット目はヴォーカルが登場。平賀マリカのトリオ「チーム ジョイア」。ピアノ、管、ヴァイオリンという珍しい編成で、クラシックからラテンまでミックスした個性的なアレンジを追求したいと結成された。昨年5月にリリースされたアルバム「Jóia」の収録曲を中心としたプログラム。

まずアルバム1曲目に収録されている「Yesterdays」から演奏が始まる。スリリングなアレンジ。早速平賀のスキャットが炸裂する。ベース、ドラムスがいないが、ハクエイ・キムのピアノの重厚な左手と抜群のタイム感覚がそれを補って余りある。

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2曲目は「Sway」。「キエン・セラ」の名前の方が通りがいいかも知れない。会田桃子の情熱的なヴァイオリンが聴衆の耳を釘付けにする。

ラテンナンバーが続いて、3曲目は「Amapola」。太田剣のバスクラリネットの深い音から始まる。平賀の伸びのある歌声が会場を魅了する。

ジャズミュージシャンは皆、コロナ禍で仕事が激減して苦しい生活を送ってきた。平賀も自分はもう必要とされてないのではないか、とまで思いつめたという。平賀がMCで、突然訪れた潤沢な時間の過ごし方をメンバーそれぞれに尋ねると、ハクエイはF1の映画に再びハマり、会田は料理の配信、太田はCD制作や作曲、平賀自身は海外とのオンライン呑み会などで過ごしたという。

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演奏に戻って、映画「バグダッド・カフェ」のテーマ曲「Calling You」。サビの部分で、「あなたを呼び続けているの、私の声が聞こえない?」という歌詞が、平賀の良く伸びる高い声で一層胸を打つ。

続けてファンキーなアレンジで、マット・デニスの「Angel Eyes」。ここでも太田のバスクラリネットの低音と、会田の情熱的なヴァイオリンが、平賀の絞り出すように歌う失恋の歌のブルーな雰囲気をさらに盛り上げる。

次は「ハレルヤ」。ヘブライ語に由来し、ユダヤ教において神を賛美する歌。アルバムのレコーディングで半日かかったという大曲。太田はソプラノサックス。平賀は歌詞の意味を噛みしめるように、丁寧に歌う。会場もしんとして聴き入っている。終わると盛大な拍手が起きる。

ラストは元気よく「Nica's Dream」。平賀が力強く歌い上げ、それに太田のアルトと会田のヴァイオリンが糾える縄のごとく絡んでいくさまは圧巻だった。

【set list】
Yesterdays (Otto Harbach/Jerome Kern)
Sway (Quien Sera) (Pablo Ruiz Beltran)
Amapola (Roldan Luis/Maria Lacalle)
Calling You (Robert Telson)
Angel Eyes (Earl Brent/Matt Dennis)
Hallelujah (Leonard Cohen)
Nica's Dream (Horace Silver, Weaver Copeland)


★4th 北村英治スーパーカルテット:北村英治(cl) 高浜和英(p,vo) 山口雄三(b) 八城邦義(ds)
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コンサートの最後を飾るこのセットを楽しみに来られた往年のファンも多かったのではないか。会場は人が増えて、空席が見えないくらいに埋まる。北村英治は92歳。矍鑠として、クラリネットの音色は衰えを知らない。演奏後のインタビューで、元気の秘訣は、と聞かれて、お酒を飲むよりクラリネットを演奏している方が楽しい、そして気の合った仲間と付き合うこと、と答えていた。

最初は「Rose Room」。1917年の懐かしいスウィングナンバー。北村はマイクから離れてクラリネットを吹くのだが、ほぼ生音なのに会場の隅々まで届く音量で、その柔らかく艶のある音に客席全体がうっとりと聴き入る。

次の「What a Wonderful World」はピアノの高浜和英が弾き語りを披露する。よく伸びて雰囲気のある歌声はまさにベテランの味だ。

次は、必ずやらないといけない曲、と言って「小さな花(Petite Fleur)」。シドニー・ベシェの作曲で、日本では1959年にザ・ピーナッツがカバーしてデビューしたことでも知られる。ミディアムテンポのスウィングで、古き良き時代にタイムスリップしたような、リラックスした好演。

次は北村のオリジナルで「さつきに寄せて」。丹精込めてさつきを育てている北村の同窓生がいて、美しい生き方をしているなぁ、と感じて作曲したという。爽やかなテーマの曲で、ボサノヴァで軽やかに演奏する。

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5曲目は「枯葉」。これも超スタンダード。ピアノの高浜が一生懸命歌詞を覚えたというフランス語で歌う。「ニューカレドニアに演奏に行ったとき、このフランス語の枯葉が大いにウケて、終演後にお客さんがたくさんフランス語で話しかけてきて全然分からなかった」というエピソードを北村が楽しそうに語る。後半はアップテンポのスウィングになって英語歌詞で歌い、最後は再びフランス語に戻る。

ラストは2曲続けて、ベニー・グッドマンの演奏で有名な定番曲「Memories of You」、そして八城のドラムスをフィーチャーした「Sing, Sing, Sing」。後者では会場から手拍子が起きる。八城の長いドラムソロに会場が大いに沸いて、最後にドラムスをバックにした北村のクラリネットソロで締めくくった。

【set list】
Rose Room (Art Hickman)
What a Wonderful World (Louis Armstrong)
Petite Fleur (Sidney Bechet)
さつきに寄せて (北村英治)
Autumn Leaves (Jacques Prévert, Johnny Mercer/Joseph Kosma)
Memories of You (Eubie Blake)
Sing, Sing, Sing (Louis Prima)

最後に出演者全員がステージに上がってジャムセッション。曲は「All of Me」。平賀の歌に続いて、メンバーがそれぞれにソロを回す。司会の池田もトロンボーンを持って登場。北村を中心に和気藹々のセッションで、会場は盛大な手拍子と共に沸きに沸いて、「しんゆりJAZZストリーム」2日目は幕を閉じた。ようやくホールで集まって音楽ができる、音楽が聴けるというミュージシャンと聴衆の喜びが伝わってくるようだった。

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それぞれのセットのMCで、ミュージシャンは異口同音に「コロナ禍の中で仕事が減って大変だったが、かわさきジャズのホール公演が開催できてファンの皆様が戻って来てくれたことに感謝している。ジャズクラブにも是非足を運んで欲しい」と言っていたことが印象に残った。

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TEXT:Ikeda Nori(かわさきジャズ公認レポーター)
Photo:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「しんゆりJAZZストリーム DAY2」
日時:2021年10月31日(日)
会場:新百合トウェンティワンホール
出演:
安ヵ川大樹トリオ:石井彰(p)、安ヵ川大樹(b)、大坂昌彦(ds)
浜崎航with松本茜トリオ:浜崎航(ts、ss、fl)、松本茜(p)、パット・グリン(b)、広瀬潤次(ds)
平賀マリカwith”チーム ジョイア“:ハクエイ・キム(p)、太田剣(as、ss、bcl)、会田桃子(vln)
北村英治スーパーカルテット:北村英治(cl)、高浜和英(p)、山口雄三(b)、八城邦義(ds)
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2021年11月16日

【ライブレポート】10/30「しんゆりJAZZストリーム DAY1」個性あふれる4つのバンドで、幸せな時間をかみしめる。時空を旅するジャズ・フェスティバル

 10月30日、新百合トウエンティワンホールで2年ぶりのかわさきジャズ公演「しんゆりJAZZストリーム DAY1」が開催された。装いも新たに、1日4組のグループが出演するジャズ・フェスティバルになった本公演。新型コロナウイルスも落ち着き、安心した表情で会場入りする観客も多く見受けられる。ステージは、おなじみのロゴがコバルトブルーの光に包まれて映し出され、開演が待ち遠しい。

 DAY1は、今回出演するBanda Felizのトロンボーン奏者、池田雅明の司会で進行。スマートな挨拶とバンド紹介の後、いよいよ本編へ。

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 最初に登場したのは、岡崎ブラザーズ。岡崎好朗(tp)、岡崎正典(ts)兄弟の掛け合いがスリリングで楽しく、田中菜穂子(p)、伊藤勇司(b)、井川晃(ds)との息もぴったりでサウンドも充実。全編が岡崎好朗のオリジナル曲で構成されたステージだったが、ハードな曲調ながら、どこかノスタルジーを感じさせる。「Hank’s Mood」で、会場全体が小気味よいビートに酔いしれた。

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続いて演奏された「Pier 54」。「 Pier」は「埠頭」の意味で、晴れた日に埠頭から眺める波打ち際を想像させるボッサのリズムが心地いい。「C.G.E」も、アメリカの街角を思い起こさせる。ライトが夜のイメージの紺色に変わり、田中菜穂子のピアノをフューチャーした「Titania」が静かに吹き抜けるやさしい風のように演奏された。フィナーレは、会場が真っ赤な照明に染まり、情熱的な「Alstromeria」で締めくくられた。

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 続いての登場は片倉真由子トリオ。「Secret Love」、そして片倉のオリジナルである「A Dancer’s Melancholy」で片倉の洗練されたピアノの音がグラデーションのように会場全体に広がっていく。そこに佐藤ハチ恭彦(b)、ジーン・ジャクソン(ds)のリズムセクションがスマートに絡み、唯一無二のバランスをつくりあげていく。モンクの代表作の一つ「Ruby, My Dear」は、明瞭なタッチで朗々と歌い上げ、やわらかな音の揺らぎが気持ちいい。

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ラストの「Pinocchio」は、ガラッと変わってのハードなナンバーで、このトリオの世界観の広さに驚嘆した。目まぐるしく動くメロディ、各奏者のハイテクニックに圧倒された。さらに、各所で引き立てられる各楽器のインプロヴィゼーションが高揚感をもたらし、ステージは熱狂的にフィナーレなフィナーレとなった。

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 3番目はブラジル音楽界のトップミュージシャンが集うBanda Feliz。冒頭は小畑和彦(g)作曲の『Sunda Land』。とびきりクリアなサウンドで会場は爽快感に包まれた。ライトも雲の模様が入ったスカイブルーに変わり、酒井麻生代のフルートと池田雅明のトロンボーンの掛け合いが心地よく、小畑の卓越したインプロヴィゼーションや石川智の華やかなパーカッションも「ブラジル気分」を演出していた。 

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続いて、ボサノヴァのナンバーでは最もポピュラーと言われているジョビンの『イパネマの娘』。緩やかなエイトビートに身を委ねて聴いた。次に、池田作曲の「Água e Peixes」。アマゾン川で、魚が飛び跳ねる場面をイメージした曲で、目を閉じて聴くとブラジルの大自然が目に浮かぶようなナンバー。そして佐藤作曲『蒼の彼方』。ダイビングをする佐藤の印象から書かれた曲。ライトも群青色に変わり、物悲し気なメロディからベースやピアノのひそやかなインプロヴィゼーションを経て静かに、そしてうねるように歌われる。

 ラストは酒井作曲の「Neste Pais」。冒頭のひそやかなフルートとトロンボーンのメロディから、軽快なリズムに乗った一糸乱れぬアンサンブルが見事。会場全体がブラジルへの旅を楽しんだかのような余韻に浸った。

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 最後に登場したのが山本剛トリオ。司会の池田から「日本のジャズ界をずっと引っ張ってくれた方、この方たちの背中を見て日本のジャズを継いでいこうと思った」と紹介があり、大きな拍手が送られた。山本剛(p)、香川裕史(b)、大隅寿男(ds)の豊かな音楽性からくる歌心あふれる演奏に、池田の言葉の重みを感じる。

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1曲目「Midnight Sure」から、名人芸といえるインプロヴィゼーションが続出し、ステージから目が離せない。「Look Of Love」も煌びやかに曲が進み、シンプルだが歌心あふれる華麗なドラムソロが演奏に華を添えた。「Misty」では、叙情的に歌い上げるピアノと静かに支えるリズムセクションの絶妙なバランスに、このままずっと聴いていたくなる心地よさを感じる。そして、ハロルド・アーレンの「Over The Rainbow」を香川のストリングベースのソロで披露。その温かみのある音に癒されるひとときになった。

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 フィナーレは、メリー・フォードの「世界は日の出を待っている」を心躍るアレンジで演奏。洗練された美しい音に、会場がこの上ない幸福感に包まれた。4時間のフィナーレを見事に締めくくった。

 アンコールとして、出演メンバー全員で、「C Jam Blues」を演奏。観客も手拍子しながら一緒に楽しみ、会場は一体となった。13分にわたるセッションがあっという間の時間に感じられた。これぞジャズ・フェスティバルの醍醐味だ。一人一人がソロをとり、お互いのコール&レスポンスやインプロヴィゼーションの応酬は実に聴きごたえがあり、この時間、この場所でしか味わえない喜びを皆で共有した。終了後は奏者同士でグータッチ。「ジャズは橋を架ける」の言葉が体現された光景だった。

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 個性あふれる4つのバンドが一つの会場に集まってつくり出した珠玉の時間。それぞれのバンドの演奏に、様々な時間、様々な風景をイメージし、あっという間の4時間で時空を越える小旅行に出た気分を味わった。来年以降も、こんな素敵なジャズ・フェスティバルが開催されることを願っている。

TEXT:小町谷 聖(かわさきジャズ公認レポーター)
PHOTO:Tak. Tokiwa

●公演情報
かわさきジャズ2021「しんゆりJAZZストリーム DAY1」
日時:2021年10月30日(土)
会場:新百合トウェンティワンホール
出演:
岡崎ブラザーズ:岡崎好朗(tp)、岡崎正典(ts)、田中菜緒子(P)、伊藤勇司(B)、井川晃(Ds)
片倉真由子トリオ:片倉真由子(p)、佐藤ハチ恭彦(b)、ジーン・ジャクソン(ds)
Banda Feliz:酒井麻生代(fl)、池田雅明(tb)、小畑和彦(g)、加藤実(p)、織原良次(b)、石川智(Per)
山本剛トリオ:山本剛(p)、香川裕史(b)、大隅寿男(ds)

----SET LIST----
【岡崎ブラザーズ】
1: Hank’s Mood
2: Pier 54
3: C.G.E
4: Titania
5: Alstromeria

【片倉真由子トリオ】
1: Secret Love
2: A Dancer’s Melancholy
3: Ruby, My Dear
4: Pinocchio

【Banda Feliz】
1: Sunda Land
2: イパネマの娘
3: Água e Peixes
4: 蒼の彼方
5: Neste Pais

【山本剛トリオ】
1: Midnight Sure
2: Look Of Love
3: Misty
4: Over The Rainbow
5: 世界は日の出を待っている

ENCORE
EN: C Jam Blues
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